異常性

この小説には、まともな人が指折り数えるほどしかいません。どこかかけてます。人としてそりゃおかしいだろう、という一面を、主要登場キャラクターそれぞれが抱え込んでます。
これは、きのこ氏の話作り全てに言えることなんでしょうけどね。
その欠けた部分をキーにして、話が進んでいく。いや、進んでいく、というのはちょっとイメージと違うかな。かけた部分がストーリーの流れにある障害物に引っかかって、流れに変化を与えるイメージ。
式にしてからがそうで、陰陽揃った状態だった式ですけど、自分のかけらが死んで欠けてしまい、(元から人間として壊れていますが)欠けていなかった式が、自己を喪失して欠けてしまう。その穴を埋めるために、殺人しようとしたり、コクトーで穴埋めしようとしたり。
肝心のコクトーだって、最初から普通でいたいなんてバカげた異常さを持っていて、それでいてその事実に気付いていない。普通でいたければまず、特別とはなにかを経験しなければならないのに、それをせずにいきなり最初から普通でいる。自己矛盾の存在。
きのこ氏は、そうしたかけた歯車を組み合わせて動かすのが抜群にうまいんですな、きっと。