ミッドガルド奇譚予告編っていうかなんだろう。書き捨て。

 人はまだ神を認知しているが、魔法が世界からはなれようとしている時代。
「父さんが殺されたんだよ……父さんが……」
 ミッドガルド――人間の囲い地にある、大国デーンには戦乱が起きようとしていた。
「ハーコン様は、リーフにマグヌスを討てって言ったんだよ! こんなところで追っ手に殺されてもいいっていうのかい?」
「わかってるよイーヴァル!それぐらいわかってるさっ! でも僕は、そんな力なんてないじゃないかっ!」
「だから力を蓄えるんだよ! 早く立って!」
 マグヌスはデーンを飲み込み、食い荒らそうとする、蛇。
「でもどうやって! 僕にできることなんて、考えることだけじゃないかっ!」
――リーフ・ハーコナルソン。マグヌスに家族全員を殺された青年。仇を討つため、神々の剣、ルーンブレイド探求の旅に出る。
「きみは今まで多くの本をよんできたんだろう? 知識はあるんだ、知恵はあるんだ、後は力だけじゃないかっ!」
――イーヴァル。リーフの親友で軽業師にして槍使い。
「俺の雇い主のマグヌスを討つのか。立った二人で……面白そうじゃないか、ええ? リーフよ。俺も一枚噛ませな。この《千の傷》エリクをな」
――《千の傷》エリク。デーン最強とも名高いベルセルグ。
「ロガランドって、あのヘルダランドに攻められた領地か? っていうことは、ハーコナルソン……あんたはそこの太守の息子ってわけか。賞金稼ぎにとっては有名だな」
――ヒャルマール。切れ者の盗賊。元暗殺者。
「若い頃のハーコンによく似ておる。特にその目。いい目だ」
――デーン国国王、スヴェン義足王。賢王。だが、齢は眼を曇らせ――
「馬鹿な王。義足王。お前は、デーンの歴史の中でも最悪の王とされるのもきづかずに」
――妻である《サルヴィスクの魔女》グンヒルドの暗躍を見逃す。
「これでいい。これで、我々の復讐が完遂される。イードレットめ、我々の力を侮るなよ」
――腹心、ブライトランドの魔道師、ウィルフリック。
「こうして耐えている間にも、あいつは父を亡き者にし、この国を乗っ取ろうとしているんだぞ。私にはこうしている時間などないはずだ」
――義足王長子。ハラルド。グンヒルドの陰謀を知る男。
「リーフさんなら、いえ、リーフさんだからできるような気がします」
――アストリッド。ハラルドの妹、義足王の娘。母、スヴァンヒルドを殺した《サルヴィスクの魔女》グンヒルドに疎まれる。
「何度いったらわかる。俺のことは、シグルドと呼び捨てにして構わない」
――シグルド。グンヒルドの実子。かの者は狂気をはらみ、母さえも敵ーー
「死ね、はらわたをぶちまけてな……」
――マグヌス。リーフの仇。デーンを蝕む蛇。
 
「俺は《復讎者》リーフ・ハーコナルソン! 我が剣、ルーンブレイドにかけて誓う。必ず、狂人ベアルクをこの手で倒してみせる!」